猿渡研究室では、我々の生活する物理空間とコンピュータネットワークの織りなす電脳空間を融合することを目的に次世代のコンピュータ、次世代のネットワークの研究を進めています。具体的な研究テーマとしては
  • センサネットワーク・アプリケーション
  • 無線LANとセンサネットワークの融合
  • ハイパフォーマンスセンサネットワーク
の3つに取り組んでいます。

次世代のコンピュータ、次世代のネットワークのあるべき姿を模索する試みとしてシリーズ企画セミナー「コンピューターの新しい形」にも取り組んでいます。

センサネットワーク・アプリケーション

2002年よりユビキタスコンピューティングを起点としてセンサネットワークのオペレーティングシステム、通信プロトコル、アプリケーションの研究を進めてきました。そのアプリケーションの1つが、筑波技術大学の倉田教授と進めてきた地震センサネットワークです。現在は、地震センサネットワークの実用化に向けて
  • 軍艦島モニタリング
  • BEMSと地震センサネットワークの融合
に取り組んでいます。

軍艦島モニタリング:
建築構造物の劣化診断などの技術は進んでいるものの、3.11で多発したような建築構造物の崩壊現象は現象自体が稀であるがゆえに知見がまだ少ないのが現状です。これに対して、今まさに崩壊しつつある軍艦島という特殊な状況で崩壊現象のビッグデータを取得するというプロジェクトを進めています。加速度センサ、音声センサ、カメラで取得された崩壊過程の映像・音声・振動データはデータドリブンの建築構造解析と言った新たな学術領域を切り開く鍵となります。軍艦島は世界遺産への登録の準備を進めており、歴史的建造物の保存の観点からも貢献できます。
軍艦島モニタリングプロジェクトウェブサイト

BEMSと地震センサネットワークの融合:
BEMS (Building Energy Management Service)では、建築構造物に電力センサ、照度センサ、人感センサを設置、センサデータを取得・解析して人が活動する際の快適さを損なわないようにしながら空調や窓を自動制御して省エネを実現しています。建築構造物の省エネ性能と耐震性能を1つのシステムで検証可能な仕組みを実現することで、リフォームや建て替えなどより踏み込んだコンサルティングサービスを提供できるようになります。さらに、地震センサネットワークを用いて地震の到来を検出した場合にはエレベータ、ポンプ、ファン、空調などの可動部分を持つ装置を事前に停止させることで故障を未然に防ぐといったBEMSだけでは実現でいないビルオートメーションのサービスも提供できます。

研究パートナー
u3
anth
eq
gunkan

無線LANとセンサネットワークの融合

センサネットワークの研究を進める中で、センサネットワークを社会展開していくためには無線LANと融合する必要があるとの結論に至りました。無線LANはデータ通信のためのインフラとして既に多くの場所に展開されているからです。

これまでのセンサネットワークは電池で動くことを前提としていたため、最大の課題は電力でした。私は無線LANに無線電力供給の機能を統合しようとしています。また、電波は物理空間の変化に敏感であるため、センシングにも利用できます。このような観点から、無線LANとセンサネットワークの融合を目指して
  • データ伝送・電力伝送・センシングの融合
  • 無線LANによるマルチビュービデオ伝送
  • 複数アクセスポイント連携
  • 重畳Spinal符号
  • 逐次干渉除去
  • 無線全二重通信
  • 中継局によるマルチホップ通信
などの基盤研究を進めています。WARPUSRPなどのソフトウェア無線を駆使して実証ベースで取り組んでいるのが特徴です。

研究パートナー
wireless
wireless
参考文献
 

ハイパフォーマンスセンサネットワーク

究極のセンサネットワークとはどのような姿をしているべきでしょうか?物理空間の情報でも量子や電波といった最も細かい粒度の情報を電脳空間に超高速に取り込んで超高速に処理可能なセンサネットワークなのではと考えています。これにより、物理空間上の現象と電脳空間上の処理が違和感なく融合できます。物理空間の情報を取り込む性能としては現在のハイエンドの計測機器レベルのものが求められます。さらに、電脳空間によってもたらされる最大の特徴であるプログラマビリティ、すなわち自由自在にサービスを構築できる機能も不可欠です。

このような観点から、SDLab (Software Defined Laboratory) プロジェクトを中心に、計測機器をソフトウェア化するソフトウェア定義計測機器の実現を目指しています。ソフトウェア定義計測機器によれば、用途に応じてソフトウェアを変更するだけで、研究者や技術者が計測機器を自由自在に構築・拡張可能となります。計測機器はシステムに組み込むことで多様な用途に利用できます。すなわち、科学計測や通信システムに携わる研究者・技術者が独自のアイディアや技術を反映させた世界最先端の実験システム・通信システムを迅速に構築可能となり、理学と工学の発展に大きく寄与することができます。実際に
  • 量子コンピュータ
  • 磁気共鳴システム
  • ソフトウェア無線機
  • 電圧標準のための計測システム
  • 超伝導X線精密分光カメラシステム
  • 深宇宙光通信システム
などの応用を目指して標準ハードウェアやソフトウェアの開発を進めています。

研究パートナー
sdlab
sdlab
参考文献